島崎藤村の晩年の大作「夜明け前」を読んだ
読んだと言っても、アマゾンのオーディブル、耳でだ
「木曽路はすべて山の中である」から始まる長編
読み終えるまで10日ほど要した
舞台は幕末から維新にかけての激動の時代
中山道の宿場町・木曽馬籠
先祖17代が暮らす本陣・庄屋・問屋の三役を兼ねる当主青山半蔵が主人公
大名の往来、和宮降嫁の行列、参勤交代の撤廃により江戸から解き放たれた大名の簾中・女中の帰郷ラッシュなどが語られる
大政奉還を英断した幕府最後の将軍
徳川慶喜の才能を高く評価し、最高の賛辞を呈して描いているところが興味深い
しかし、明治政府は文明開化をすすめ、あらゆるものを西洋化してゆく
その上、人民への圧迫をどんどん強める
そんな世に絶望し、騒動を起こす半蔵
明治天皇の行列に「憂国の和歌」を書きつけた扇を献上しようと試みる直訴事件
地元寺院への放火未遂事件
最後には、村人たちに狂人として強制的に座敷牢内に軟禁されそこで没する
遺族や旧友、愛弟子たちは、半蔵の死を悼みながら国学式で埋葬する
半蔵は、藤村の実父がモデルだという
維新の下積みとなって働いた人々を描いたこの作品は、
近代日本文学を代表する小説として評価されているという
「夜明け前が一番暗い」そうだ
読み終えた後の僕の感想は、 ~ あまりにもやるせない
先日、藤村の「ある女の生涯」を読んだ
これは、精神病院で亡くなった実姉の晩年を描いた作品
新しい日本が始まろうとする維新
この激動の時代を背景に、淡く切なく語られるモノクロの物語が僕は好きだ
しかし、発狂して最期を迎える両作品のラストシーンは、
あまりにも辛くて、やりきれない
春蘭の花が咲きました ~ 自宅の庭