スポーツジムの帰り、時計は19時、窓を全開にして一人車を走らせた。冷たい風がシャワーで火照った体に心地よい。窓の外はすっかり秋の気配だ。寂しげな虫の声が夏の終わりを感じさせなんとなく切ない。
今日の夕食は秋刀魚の塩焼きだ。早く食べたい。
数日前、友人から、「新米が出来上がったから取りに来い」との連絡が入った。毎年、この友人に米を調達してもらっている。この連絡が入ると、私の中の季節は夏から秋に変わる。
この米は、殆どが親戚などへの「縁故米」として消費され、市場へ流通することは少ないという。だから、「幻の米」と呼ばれるているのだそうだ。
粘りがあってとても美味しく、江戸時代には徳川幕府献上、現在も天皇陛下献上米に選ばれ「全国品評会」において日本一にもなっているブランド米だ。
今年は、90kg(30kg×3袋)注文した。これで1年分だ。
毎年この時期に、妻と二人、近況報告を兼ねてこの友人宅にお邪魔する。往復約3時間のドライブだ。
今年は、コロナ禍ではあるが、2回のワクチン接種を済ませているということで、部屋に上がらせてもらった。コーヒーとケーキ、地元産の梨をご馳走になった。
友人は再就職先の仕事がハードで大変らしい。奥さんも、夫の帰宅時間が現役時代より遅くなったと困り顔だった。彼は「そろそろ仕事を変えたい、前職の人事課に相談してみる」と話していた。確か去年も同じようなことを言っていた記憶がある。大変だなあ。
セカンドライフでそんなに苦労して働かなければならないなんて、‘‘無職の自由人‘‘を選んだ私にはとても理解できない。私達の世代になれば、いつ死んじゃうかも分からないのになあ。
「もっと、楽しんだほうがいいんじゃないの」と言いたかったが、やっぱりそれは言えなかった。
私たち夫婦は、彼のお嬢さんと会うのを毎年楽しみのにしている。会う度に奇麗になっていくからだ。しかし、今年は不在だという。先月入籍し既に家を出ているとのこと。来週末に家族親戚だけで結婚式を挙げるのだそうだ。二人娘の長女だけに、親として気持ちは複雑なようだった。
お互いの近況を1時間ほど話して友人宅を出た。