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ファーストラブ・セカンドラブ ~ 二度の失恋 ~

彼女を初めて見たのは僕が中学1年生のとき

卓球部で長い髪をなびかせて白球を追う彼女

体育館の入り口から遠くにみて憧れた

 

彼女は同級生で僕とは別の小学校出身

お互い別々のクラスだったが

中学2年生になると同じクラスになった

僕は教室の彼女をいつも目で追っていた

初恋の始まりだった

 

席替えで2人が前後の席になったことがある

僕が前、彼女が後ろ

僕が横を向いて彼女と話をするのが日課

毎日学校に行くのが楽しかった

そんなある日、何人かの生徒が「席替えをして欲しい」と担任の先生に申し出た

先生が「席替えをしたい人は手を挙げて」とクラスの生徒全員に聞くと

手を挙げずに席替えの拒否を意思表示したのは前後の席に座る僕と彼女だけ

大好きな彼女が僕と同じ気持ちでいてくれたということがとても嬉しくて

「ヒューヒュー」とみんなに冷やかされても

恥ずかしさなんて微塵も感じなかった(彼女、僕に気を遣って手を挙げられなかっただけ?)

この日から二人の関係は公然の秘密になった

 

いつからか二人は学校から帰ると毎日電話で話をするようになっていた

きっかけは覚えていない

多分勇気を出して僕から電話したのだと思う

だけど夏休みが終わるころになると明るかった彼女の態度が一変した

口数が少なくいつも不機嫌になった

僕から電話することはあっても彼女からの電話は全く途切れた

それでもいつかは連絡をくれるだろうと高を括っていた

ところが、あまかった、学校でも無視されるようになっていった

何が原因で嫌われたのか、その理由は未だに分からない

子供だった僕が心無い言葉で彼女を傷付けたのかもしれない

彼女のことが大好きだっただけに

初めての失恋のダメージは大きかった

傷心した虚ろな日々が永く続いた

本当に辛い時期だったと思う(あの頃の僕には ”大丈夫だよ、これから先にはいいことが一杯待っているから、めげるなよ” と言ってあげたい)

 

立ち直れないまま中学校を卒業し

二人は別々の高校に進学した

未練がましいけど、いくら時が経過しても彼女を忘れられず、長い間引きずった

だから、彼女にまた会いたくて高校に入ってからも

待ち合わせて二人だけで会った記憶がある

日曜日の午後に肩を並べて海岸を歩いたし

土曜日の放課後に喫茶店で珈琲を飲みながら談笑もした

 

あれは高校を卒業する年の春のことだ

自動車教習所の待合室にいる彼女を見つけて目で挨拶を交わした

それから間もなくして彼女から葉書が届いた

「このあいだ、教習所で○○君(僕)を見かけました......、」はがきの裏面にはびっしりと彼女の綺麗な文字が並んでいた

このことがきっかけで何とまた連絡を取り合うようになった

 

二人で最寄駅から電車に乗って新宿でデートしたことがある

デートといっても映画を観て食事をしただけ

(今考えると「何やってるんだよお前、いくじがないなぁ」とあの頃の自分に気合を入れたくなる)

何の映画を観たのか、何処で食事をしたのか今の僕は全く覚えていない

ところが、この日のことを彼女が鮮明に覚えてくれていたことには驚いた(先日のクラス会で再会して分かったこと)

 

僕の19歳の誕生日には僕の家まで彼女はお祝いに来てくれた

彼女は僕の部屋に入った初めての同年代の女性であり

僕の両親に紹介した初めての女性だった

そのとき貰った手作りの名前入りのクッションは、カバーをかけて今でも大事に使っている

僕からは、お互いの名前を刻んだお揃いの腕時計を彼女にプレゼントした

 

その日、彼女の帰り際、僕の部屋のドアを開ける彼女の肩を後ろから抱き

「○○(彼女)のこと好きだ」と告白した

彼女は「うそ」と言った

何故「わたしも」と返してくれなかったのだろうか(もし、「わたしも」と言ってくれていたら ........?)

 

そしてまた、僕から連絡することがあっても彼女からの連絡は途切れた

やっぱり今度も理由が分からない

彼女との二度目の失恋だった

このときも心に大きなダメージを受けた

僕は”時間”という薬に頼るしかなかった

 

自分を選ばなかった理由を確かめるため元恋人に会いにいく、夏目漱石の未完の大作「明暗」の主人公 津田由雄 の心境が女々しい僕にはよく理解できる

 

その後、彼女を勤務先まで送ったこともある(どこまで女々しいんだよ、おいお前)

23歳だった頃のある日の朝

通勤のためバス停でバスを待つ彼女と

その前を車で通過する僕の目とが合った

近くに車を停めると彼女は駆けてきて僕の車に乗った

この日、車の中で彼女から「同じ職場の7つ年上の人と結婚することになったの」と聞いた

「そうなんだ、おめでとう」と、やっとの思いで言ったものの、やっぱりショックだった

その後も綺麗になっていく彼女を電車内で何度か見かけたが

もう僕からは声をかけられなかった

そして、彼女は結婚し僕も結婚して、今はそれぞれの人生を幸せに生きている

 

先日のクラス会で64歳になった彼女と再会出来たこと

僕との思い出をいっぱい覚えていてくれたこと

そして今でもキラキラ眩しくて綺麗でいてくれたこと

今はそんな彼女に感謝している

「過去の恋愛の保存方法は、男は別ホルダーだが女は上書き」と誰かが言っていた

本当にそうなのだろうか?

来年のクラス会で再会できたら嬉しい

 

↓ 週末は、自宅近くのイタリアンレストランで妻と二人でランチしました。